(うちなぁ点描 第290回 週間かふう Vol.341  2012年4月13日 掲載)

文と絵 平良 和繁 TAIRA KAZUSHIGE

 去った3月17日(土)に宜野座がらまんホールが企画し、ピアニストの矢沢朋子さんが演奏する “Piano+ 大人の音楽会”にトークゲストとして出演しました。ピアノ&トークを聞きながらワインや紅茶も楽しめるコンサートで、今回のテーマは美術、建築や音楽にも深く関わりのある [黄金比(分割)]。黄金分割で作られたピアノ曲を中心に、300年前から現代までの音楽を演奏し、古代から現代までの黄金比(分割)と関連する建築を解説していく、建築と音楽の異色(?)コラボで、楽しく参加することができました。

 今回のテーマの黄金比をわかりやすく、黄金長方形で説明します。黄金長方形とは短辺を1、長辺を1.618・・(無理数 小数点がずっと続く実数)で、この比率が[最も美しい比率]とされています。身近な物では、名刺がなんと1:1.618・・の長方形で黄金比!

 人体にも黄金比が存在していて、有名な彫刻のミロのヴィーナス(腕のない女裸体の彫刻)は足の爪先からおへそまでを1、全長が1.618・・の比率で、最も美しい人体プロポーションとされています。建築においても、古代のピラミッド(クフ王)の高さと底辺が、また古代ギリシャのパルテノン神殿の正面壁の高さと幅が、1:1.618・・と黄金比とされています。

 このように我々の身近な物にも多くの黄金比が存在しています。ところが、この音楽会のお話を聞いた時、音楽と黄金比 (分割)が、どのように関係しているのか全くイメージがつかめなかったので、調べてみると、黄金比の分割で作られた曲があることが分かりました。

 黄金比は無理数ですから小数点がずっと続くので、黄金比の数列(フィボナッチ数列)をみると3:5、5:8、8:13、13:21など黄金比の数値に近づく数列になっています。

 例えば全部で89(1.1618)小節の曲を、55(89÷55≒1.618・・)小節で音量が極大になるなど、黄金比の数列を楽曲の各小節に当てはめた曲などがあり、心地よい曲になると言われています。この曲の譜面の黄金比の小節を絵(視覚的)としてとらえてみると、音楽を聴覚、視覚の両面から接することができました。

 また、沖縄にも黄金比に関連する建築物はないかとグスクや古い建物を調べ、正面図(立面図)等から比率を測ってみると、なんと首里城の守礼門が黄金比に近い事を発見!高さと屋根の最先端の幅が1:1.618(約5:8)に近く、ほかに4本の柱を正面から見ると、門の高さを1(5)とすると、中央の門と左右の門どちらかの一方の門を足した幅の比率が1(5):1.618(8)と黄金比に近いことが分かりました。

 日本本土に黄金比が伝来したのは室町時代(1300年代後半頃)とされていますが、中国から直接、沖縄に伝えられた可能性も時代的にあります。

守礼門が意図的に黄金比を使用して造られたかはわかりませんが、図のように幾何学図(図形)で分割する方法で造られたのは間違いないようです。

今回、出演した音楽会で新たな発見があり、音楽や建築の楽しみ方が広がりました。